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【解説】〔再評価〕
- ドアが後退、すなわちAピラー下部が後退している。 さらに助手席側の写真では、Aピラー下部の鉄板が平らに伸ばされている様子が見られる。
- トーボードの侵入が目立つ。 ブレーキペダルは侵入したトーボードに押されて上方に移動している。 足元フロアの変形量は甚大で、衝突前はほぼフラットであったフロアは衝突後に波うっており、その大きさは運転席側ダミーの右足のかかとが隆起したフロアに隠れているほどである。
- 両席ダミーの足首は急角度で曲がっており、足首の骨折が予想される。
- ダッシュボードの後退が目立つ。 助手席側ダミーの膝はアシストトレイ付きボックスの蓋に近接あるいは接触しており(エアバッグで隠れて見えないので詳細は不明)、膝の打撲が予想される。
- Aピラーの途中に明確な折れが見られる。
- Aピラー〜ルーフにかけてキャビンの変形が見られる。
- 衝突中の室内を撮った写真ではハンドルの車両右向きへの移動が目立ち、エアバッグの頭部保護性能が充分に発揮できない事態が予想される。
※衝突後にハンドルの左右や上下の移動量を測定することが望ましい。
【寸評】
- キャビン前方の弱さが目立つ(1,2,4,5,6)。 特に、明確な折れが見られるAピラーの弱さは要注目(5)。 変形が大きいオフセット衝突での乗員保護性能は期待できない。
- フロアの変形が目立つ(2)。 トーボード〜フロアの侵入により下肢が押し戻さると共に、足首の曲がる角度が大きくなっており、足首骨折の高い可能性が予想される(2)。 オフセット衝突では下肢圧壊を覚悟すべき。
- 車両前部のクラッシャブルゾーンが弱すぎると共にキャビン前方もクラッシャブルゾーンと化している。 特にダッシュボードの後退が目立つ事から、エンジンの侵入に耐えるための強度が大きく不足していると思われる。
※自動車事故対策センターの評価は『衝突エネルギーの吸収は、エンジンルーム内でほぼおさまっている。』となっている。
- 助手席側ドアの付け根(Aピラー下部)の鋼板の変形が目立つ(1)。 衝突前は折り曲げられている形状だが、衝突後は引っ張って伸ばされたような平板な形状に変化している。
これは、ダッシュボードが大きく後退している(4)一方でドアが(Bピラーとの間で)つっかえ棒のようになっているため、後退したダッシュボード内側の構造材(スカットルなど)とドアを取り付けている蝶番とでドア付け根付近の鋼板が前後に引き延ばされたためと推測している。
オフセット衝突時のダッシュボード侵入量やハンドル移動量の増加は全てのクルマについて懸念される事ではあるが、ステップワゴンに関しては特に気になる。 また、ドアの付け根付近の鋼板の破断やドアの脱落の発生の有無についても気になるところである。
【補足】
- 自動車雑誌「ニューモデル マガジン エックス(MAG X) 1999年3月号」の「読者の声」コーナーに、『ステップワゴンに乗る(投書の主の)友人が対向車線をはみ出したスターレットと衝突したら、スターレットの女の人は無傷だったがステップワゴンの友人は足を切断した。 ステップワゴンは乗員スペースまでエンジンが進入したのに対しスターレットはフロントこそ大破だが乗員スペースはすこししか変形していなかった。』という旨の投書が載っていた。
この話の真偽や状況を確かめる術は私にはないものの、今回の両車のテスト結果から判断すれば充分に納得できる話である。
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